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バブル原因10 バブル原因10
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不動産鑑定徒然草 (2010/12/21 by 山口 隆)
                                                                                                                                                印刷用<click here>


バブルはなぜ起きたか - バブルと群知能 -


バブルの原因究明は不可能に近いと考えられてきましたが、自然科学の進歩を取り込み、
従来タブーとされがちだった「人を生物として見る視点」で考えると本質的な姿が見えてきます。
本稿は近時有力となっている「アニマルスピリット」を重視した経済理論を起点に考察を進めたものです。

思考の整理法:
  1. 『構成要素+まとまる力=次段階の構成要素』の連鎖(自己組織化創発
      自然: ‥素粒子→原子→分子→物質→地球→太陽系→銀河系‥超銀河団‥
      生物: ‥細胞→器官→生物→群れ(各々プログラムを持つ構成員が群れを創発)
      創発: 自立的な構成要素が集まって「質的に異なる秩序やシステム」が生じる現象。
  2. 遺伝子は自身の保存拡散を目指して生物を設計している(→群れ・際限ない蓄財欲の源)。
  3. 脳の発達:大脳の割合は新世代の生物ほど大きい。人は新皮質が特に発達している。
      古い脳に入っているプログラムは遺伝する。新しい脳から入った経験は(ほとんど)遺伝しない。
  4. 人は、ものを考えるとき、まず古い脳が反応し、後で新しい脳で考える(→群行動と非理性)。
      新しい脳が作り出した制度と古い脳との不整合→新しい脳が必要とする正確な情報と経験が必要。
      情報・経験が少ないと新しい脳は働きにくい(将来<現在、投機<実用品、不確実性)→古い脳が出る。
      (例えるならば: データ(情報)と計算式(経験)がないと表計算ソフト(新しい脳)は動かない!)
  5. 人の集団はリーダーと命令を持つ場合が多いが、命令を持たない(弱い)リーダー無しの集団もある。
  6. 以下、リーダーのいる集団を「組織」、いないが情報伝播等で集団行動が生まれる場合を「群れ」と呼ぶ。


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<バブルと群知能>

早い者勝ちや投機熱で本能的な投機が活発化した不動産市場では、
参加者は、誰かに命令されて、その取引きを行っているわけではない。
各構成員は、互いに・また自らの環境と対話しながら、「独立して意思決定を行っている」。
他方で、各構成員が行う行動の集合体として、「市場(群れ)」の動きが別のものとして現れる。

各構成員は、誰からの命令も無しに、風評伝播で、自らが持つプログラムが作動し、
ある者は転売利益を見込み、ある者は計画を前倒しし、ある者は10年先を見て、殺到し、
「上がるから買う→買うから上がる」を皆で繰り返し、市場の相場の高みを築き上げている。
この動きが活発となって高い価格の流れをつくると、現在の実需に基づく価格は対抗できない。

<リーダー不在、各自が衝動に導かれて行動、それで集団が成り立つ!>
<本能?どんな?‥人間を特別だと考えないなら、自然な推測は→群れ・縄張り>
<情報伝播等で共通に持つプログラムが作動して集団行動が生まれる仕組み→群れ行動>
GDP-日本 西新宿-地価

ここで作られる相場は「群れの動き」の産物である。
熱狂により「群れの動き」がバブルをつくっていても、
各構成員は「群れの動き」の中で「独立して動いている」ので、
自らがバブルを起こしているという意識を持っていない → 崩壊後には犯人探しが始まる。
不確実性が高い中で、強い動きが出てくると、市場の動きは古い脳に左右されがちとなる。
他の構成員が「新しい脳を使って」「市場の動きに合わせても」全体の動きは理性的にはなりにくい。
ここで現れた「強い動き」の正体は、人間の集団が作っている「強い」「群れの動き」である。
この点が明確にならないと、いつまでたっても「バブルの答え」は出ないであろう!

このような仕組みの自然界の例としては、細菌のコロニー、蟻のコロニー、‥‥‥
魚の群れ(群れで遊泳)、鳥の群れ(群れで飛翔)、哺乳類の群れ(ヌーやバッファローの移動)などがある。
群知能 参照のこと

群れをつくる本能の力は大変に強い(遺伝子のサバイバル戦略)!
ブームは、変化時に「集団がまとまる力」が生みだす「少数が多数化する連鎖反応」。
投機価格の変動を起こすのは出来事自体ではなく、出来事に対する人間の集合的反応である。
時には、錯誤や思い込み、不安や上気でも起こり、群れの中にいると、どうしようもない吸引力が働く。
人の手が見えると争うが、ここで出た結論(価格・価格変動)は残酷でも受け入れる(争う相手が存在しない)。
国民の中には「投機熱」と「高騰に対する不快」が同居し、両者の関連に気付かない人も多い。
「おかしい」と思う人も、バブルの中では、そこでつくられた相場でないと買えない。
売買を行わない人も、自分の資産の名目上の評価が上がることで、流れに巻き込まれる。
関連する業界のプロも、皆、流れに巻き込まれる。不確実性が存在し誰も完全な予測はできない。
「これはバブルだ」と指摘する学者は異端者のように見られる(崩壊後に尊敬を集める)。
政治家は、国民の多数の同調が見込める状態にならないと、バブル潰しに動けない。

(但し、日本は世界史上でも珍しく、土地については途中から抑制を始めた)

1987年半ばには地価高騰が大問題となり、
緊急土地対策要綱、金融機関の融資に対する指導、
監視区域の設定(東京先行国1987/8)等が始まったが、高止まり、
総量規制で本格的なバブル潰しに繋がったのは、2年半後のことだった。

後から考えて最も悔やまれたのは、
その2年半の融資が後の金融危機に繋がったこと!
最も重要なことは「国民が早くバブルと気付くこと」!
そのための仕組みを作る必要がある!


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  (P.S. 2013/03)

 <主な参考文献・本稿に取り入れた基本的視点>

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"Animal Spirits"
  Author: George A. Akerlof , Robert J. Shiller

 1. アニマルスピリットはバブルの発生崩壊の中で重要な役割を演じている。
 2. "Stories" の伝播は伝染病の観点からモデル化できるかもしれない。 ← これができれば!

 (感想:日頃当たり前すぎて気が付かないことの中に重要なヒントがあることに気付かせてくれた)
 (ノーベル賞受賞: 2001:Akerlof、2013:Shiller)

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"New Science of Socionomics"
  Author: Robert R. Prechter
  <p147-p162, p394 要旨>

 1. 金融投機の中にはフィボナッチ(黄金比の連鎖反応)が存在する。
 2. 感情と、それに基づく行動は、新しい脳による思考とは独立して起こり、しかも早く起こる。
    人は、ものを考えるとき、まず古い脳の反応が先行し、後で新しい脳で考える。
 3. 金融投機においては、新しい脳(大脳新皮質)ではなく、古い脳が重要な役割を果たしている。
    古い脳は本能的な活動を支配し、防衛本能や種の保存のための基礎として強い感情を生みだす。
    その中の一つに「群れをつくること」がある。
 4. 需要と供給の法則は合理的で論理的な意思決定を支配し、実用品の価格を支配している。
    しかし、情報が少ない時、人は論理的にものを考えるよりも、集団に追随する。
 5. 群れの感情に基づく思考に基づいて予想を行うことは、現在のムードを表明しているのと同じである。
    成功するかどうかは、現在のムードが続くかどうかに関わってくるが、通常、それは続かない。
 6. 群れ行動は、古い精神構造のツールをあまりにも多く備えているため、現代の金融投機の中で
     勝ち残るためには、非生産的なものとなっている。
 7. 「べき乗則に従う複雑な現象は予測ができない」というのは誤りだ。それを解くカギはパターンの中にある。

 (感想:コペルニクス的転換、黄金比が証明されればノーベル賞?)
 (以前から「波」について考えていた。結論は似ているが本稿は「独立して」結論に至ったものである)
 (べき分布までは物理学的に解明されほぼ確実と思われる。黄金比の存在は今後の研究課題と感じられた)

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 (生物学的視点より)
 人を生物として見ることで、バブルの本質が見えてきた!
 出発点は生物はなぜ群れをつくったのかだった。その頃「粘菌の群知能」がブームになっていた。
 驚愕、群れの出発点は知能!なぜ?→不確実性の軽減克服でニッチが開けるから→投機と同じ!

 「人の進化」と「経済」の関係について「進化心理学」から重要なヒントをもらった。
 「進化と遺伝子変化」「フラクタル構造」「環境との相互作用の仕組み」等から、
 身体だけでなく、基礎的な反応・感情にも対応関係は生じうると考え、仮説を立てた。
 (人は「つられる」(反応)だけでも群れ行動するが、「上気・不安等」(感情)はそれを伝播し易くしている)
 (イノベータ理論のような個性差(オピニオンリーダー)の存在が、それを更に伝播し易くしている可能性がある)

 開拓者の最新出版物(2012/04)
"The Social Conquest of Earth"
  Author: E. O. Wilson
<p191->
 1."Human nature"の存在は、20世紀には、ほとんどの社会科学者によって否定された。
    人の社会行動は全て学習の産物、そして、文化は全て歴史の産物と考えられてきた。
 2. 経済学者はそれを迂回してきた、哲学者は‥ 神学者は‥ 政治思想家は‥ ←重要..タブーだった!
 3. それは遺伝子と文化の発展の相互作用で遺伝子外で形成されてきた  ←重要..遺伝子も文化も!

 (それは、時に政治的に悪用された。宗教の問題もあった。そうでなくてもそれを言うと他人から見下された)
 (しかし、それを見ないと、それに由来する現象の全容が解明できない。バブルもその一例なのかもしれない)
 (今日では、脳神経科学や遺伝子解析の急速な進歩で、それは否定しようもない事実となった感がある)

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 (物理学的視点より)
 社会科学で「群衆行動」と呼んでいるものは、
 生物学者の目で見ると「群れ行動」、物理学者の目で見ると「臨界現象」である。

 開拓者の出版物(2006/03)
"The Misbehavior of Markets: A Fractal View of Financial Turbulence"
  Author: Benoit Mandelbrot and Richard L. Hudson

 「歴史は「べき乗則」で動く
 Author: Mark Buchanan

 「経済物理学の発見
 著者:高安 秀樹
 1. 市場は自己組織化臨界現象である。
 2. 臨界状態では「べき分布」や「フラクタル的性質」が発生する。
 3. 為替データの解析結果は、金融工学が前提とする「正規分布」ではなく、「べき分布」している。
 4. バブルは双方から引かれる現象で崩壊を伴う、インフレは一方に臨界超過が続く現象で反動を伴わない。
 5. インフレは集団心理で発生・成長しハイパーインフレも起きるが、デフレにはそれに対応するものがない。
     両者は全く異なる現象とみなすべきである。
 6. 市場価格の変動は、完全な予測や制御は無理でも、ある程度予測の的中率を高くすることは可能である。

 (一般商品や不動産では、価格が動かない、相場が見えない、相場の山が複数ある場合もある)
 (同じく「市場で形成される価格」でも、短期的には「正規分布」、長期的には「べき分布」があるかもしれない)
 (「縄張りを維持できる時」、「群れ行動へ移行する時」、「群れ行動となっている時」があるかもしれない)
 (不動産価格の推移の分析では、動きが急なとき「正規分布」を前提に分析すると、大きな誤差が生じうる)
 (発散しない構造となっている(但し不換紙幣は例外)‥価値感 + 臨界説・ロジスティック差分方程式説‥)
 (経済学の基礎が変わると、鑑定評価理論の基礎も変わる可能性がある。知的準備が必要である!)


   続きを読む (click here) → 3.投機熱の伝播



       <目次>
       1. 「バブルはなぜ起きたか - 総括 -」
       2. 「バブルはなぜ起きたか - 群知能 -」                 ← We are here!
       3. 「バブルはなぜ起きたか - 投機熱の伝播 -」
       4. 「バブルはなぜ起きたか - 投機.価格.価値の遺伝子 -」
       5. 「バブルはなぜ起きたか - 新型発生のメカニズム -」
       6. 「BOIDSとインフレ期待」
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